Vol.2

梅の花

円覚寺白鷺池の畔に池にせり出すように一本の梅の木があります。池と線路の間の路地を行くと、地形のせいでしょうか、そこだけ包み込むように梅が香っています。
北条時宗が無学祖元を招いて開いた円覚寺は今でも禅宗の専修道場です。北鎌倉駅に隣接するように石段と門が聳えています。件の白鷺池は線路を挟んで寺と反対側にあります。
これは、明治時代に横須賀線を寺域を貫いて通してしまったためです。当時横須賀は東京防衛の拠点で、鉄道は軍用の目的が重要でした。この時に白鷺池も大半が埋め立てられ、今残っているのは元の一部とのことです。
また、池の南の縁は小川を隔てて鎌倉街道が通っていますが、ここも以前は寺の内で、駅前の信号のところと、料理屋「門前」の両側に木戸があったことが古地図でわかります。昔の街道は、駅前の交番前を入って門前に抜ける迂回路でした。土地のひとは「馬道」と呼びます。馬はこちらを通ったのでしょう。
早春の夜は、駅を円覚寺の臨時改札から出て、総門前の踏切を渡って白鷺池を巡ることがあります。門前を過ぎるとき、寺に向かい深々と礼をして行く人も未だ時々見かけます。

梅が香に禅道場の堅き門  冬木